『屋根の上のバイオリン弾き』の原作。
イディッシュ文学の金字塔。
『牛乳屋テヴィエ』、読了しました。
この小説は、1910年代に書かれたウクライナが舞台の小説です。
主人公は題名の通り、牛乳屋を営むユダヤ人テヴィエ。彼が、聞き手である作者ショレム・アレイヘムに向かって語りかける形式で進んでいく小説です。
テヴィエは、貧しくも信心深い模範的なユダヤ人です。彼は、自分の娘たちのことを非常に可愛がっていました。しかし、娘たちはユダヤの伝統的な生き方から脱していこうとします。
自由恋愛、革命、そして異教……テヴィエの娘たちはさまざまなものに飛びつき、テヴィエから離れていってしまいます。さらに、時代は反ユダヤ主義へと向かっていきます。苦悩し、切なさに耐えるテヴィエ。わたしはこれでも立派な男だ、女々しくてはいけないと言いつつ涙をこらえる彼の姿に、思わず私の方が泣いてしまいました。
なぜ、わたしに狙いを定められるのですか。
なぜ、わたしを負担とされるのですか。
なぜ、わたしの罪を赦さず
悪を取り除いてくださらないのですか。
田舎の貧しい牛乳屋テヴィエの生活を通して、ユダヤ人の苦難に満ちた歴史、さらに言えば信仰者として生きる苦しみが描かれています。
私は、この小説を通して失っていた信仰を少し思い出しかけました。また、ユダヤ人の歴史に興味を持つようにもなりました。
大変面白い小説でした。